2009年07月11日
子取り鬼
スティーヴン・キングの短編。「深夜勤務」に収録。
一人の男が、病院にて医者に語る場面から始まるのですが、彼は我が子をクローゼットに潜む鬼に喰われてしまったと訴えます。子供はずっと「クローゼットに鬼がいる」と訴えていたのに、なかなかそれを信じられずにいたために、やがて子供を鬼に食べられてしまいます。
この作品も短いながらにオチが素晴らしいです。
妄想だと決めつけてしまった医者も、結局この鬼に喰われてしまうのですが、主人公の情けなさとかもしっかり書き込まれていて、深い話だと思います。
これは映像化されてないのかなあ、見てみたい・・・。
2009年07月11日
トラック
スティーヴン・キングの短編作品。「深夜勤務」に収録。
ある日突然世界中で、トラックが人間を襲いはじめる。ひとりでに動きだし、人をひき殺したり、はね飛ばしたり。
ドライブインにたてこもった生き残りの数人は、トラック達との持久戦に挑むが、やがてトラックからの「給油せよ」という信号を受け、生き残るために給油を始める・・・
原作は、果てしなく続く給油の描写で終わるのですが、こちらも映像化されてます。映画のほうはオチもきちんとつけてくれてます。ただ、リメイク版も出ていて、そちらはラストがしっくりきません・・・。映画を観るならば、エミリオ・エステベス主演の「地獄のデビルトラック」をおすすめします。キング自ら撮った作品で、キングらしいファンキーさが出まくってます。
ついでに、リメイク版は「ザ・トラックス」というタイトルですよ。
2009年07月11日
地下室の悪夢
スティーヴン・キングの短編。「深夜勤務」の中に収録。
主人公はホールという学生。大きな工場でバイトをしている。
ネズミが多いので、工場の監督から清掃するように命令され、仲間数人と地下室の清掃にかかるが、地下室の床にまだ更に地下2階への入り口があるのを発見。渋る監督を説得して、地下2階へと下りてゆくが・・・そこで見たものは光の差さない闇の世界で進化した、恐ろしいネズミだった。
とっても短い作品です。ちなみに、こちらも映像化されてます。
監督が、ものすごく嫌な奴です。もちろん、これだけ嫌な奴ならば、当然、痛い目にあうようになってます。そこはキングもしっかり押さえてくれてます。いい気味です。
この作品の終わりが好きです。あの後、どうなるんでしょう。色んな想像ができますね。
2009年07月11日
やつらはときどき帰ってくる
スティーヴン・キングの短編です。
扶桑社ミステリーから出てる「深夜勤務」という短編集の中に入ってます。
主人公ジムは高校の教師。彼は9歳の頃、町の不良に12歳の兄、ウェインを殺された過去を持つ。不良達はその後事故死していた。大人になったジムは高校教師となり、新しく教える事になった高校で、一人目の転入生がやってくる。
かつて、兄を殺した不良の一人が、当時の姿のままジムの目の前に生徒として現れる。そして、教え子の一人が事故死し、その直後にまた転入生が。
その転入生も兄を殺した不良の仲間だったことから、ジムは悪霊の力を借りて、奴らを地獄へ送り返そうとする。
ある儀式を行い、自らの体の一部を生け贄として捧げ、悪霊に自分の望みを叶えさせるのだ。
不良達がジムを殺そうとやってきた時に、闇の世界からやってきたのは、12歳のウェイン。彼は不良達をたちまち消滅させ、ジムに「また来るよ」と声をかけて去ってゆく。
短いのですぐに読めてしまいます。
ちなみに、こちらは映画化されてます。
「ブロス リターンズ 奴らはふたたび帰ってくる」
でも、お兄ちゃんとか出てきやしません。主人公も高校教師じゃなくて、心理カウンセラーだし。でも、なかなか面白かったですよ。映画もおすすめです。
2009年05月05日
セル
「セル」 スティーヴン・キング作品
携帯電話を使用していた人々が突然ゾンビ化してしまう話。(か・・・簡素すぎる・・・)
携帯電話を通して何らかのパルス信号が送られていて、その電波によって人がゾンビみたいな感じになっちゃうんですが、タイトルの「セル」は「セルラーフォン」のセルですね。
いつにも増して、やっぱキングはこうだよな、という感じの物語です。物語的には「スタンド」と似た感じなのかな?悪くなった人達がいて、助かった人達との戦いみたいな。
これを映像化して欲しいのは私だけですか・・・?
2009年05月05日
IT
「IT」 スティーヴン・キング 作品
こちら、スティーヴン・キングの長編小説。「IT」(イット)の文庫です。実は、社会人になってすぐに書店でこの作品のハードカバーを見つけて、そのあまりのインパクトに購入。文庫化されてからも、「読み直すならば文庫のほうがいいよね」と文庫版も購入。(こういう事をけっこうやらかす私)
とある小さな田舎町で、約30年周期で起こる行方不明や事故、災害による大量死・・・死のサイクルに始めに気付いた少年達は、やがて背後に見え隠れする禍々しい存在と対峙する事になる。言葉では表せない「それ」=「IT」との対決は、少年達が勝利したかのように見えたが、彼らが大人になった30年後、再び「IT」が訪れる・・・。
とにかく、登場人物の背景や描写をきっちりとしているので、ページ数がすごいこの作品。キングの短編も好きですが、やはり長編は他にはマネできない凄みがあります。キングと言えばホラーと思われがちですが・・・まあ、確かにホラーなんですけど(どっちや)怖いとか血しぶきだけのホラーでない物語の深さがあるので大好きです!!
この作品は、ホントにキング作品の中で一番好きです。大人になったら見えなくなる、気のせいで済ませてしまう事柄も、子供の時には「信じて」いける、信じているからこそ、力になるというキングの思いがすごく現れてます。「魔法は存在する」という言葉で、ほんとに彼はストーリーテラーとしての才能が枯渇する事がないんだろうなと思いました。
長い話ですが、読めばものすごく面白いです!!
ちなみに、こちらの作品も映像化されてます。海外のテレビドラマ用に作られたそうですが、DVDも発売されてます。低価格で販売されてるんですが、昔の作品すぎて日本語吹き替えでないところが残念です。
2009年04月24日
クージョ
「クージョ」 スティーヴン・キング作品
自家用車が故障したために、子供と一緒に整備工場へと向かった母親。しかし、そこには狂犬病にかかったセントバーナードが待ちかまえていた・・・。
故障した車の中に炎天下の中閉じこめられた親子の物語ですが、故障してるからクーラーかかんない、動かない、携帯もない、近所に家がない、整備工場のおっさんは死んでる・・という、絶対絶命の状況で、炎天下、子供も脱水症状を起こして衰弱するわ、外からはセントバーナードが牙むいて狙ってくるわ・・とにかく、一冊丸々、これでもかーーーーーッ!!ってくらいに親子をいじめ抜く状況が怖いです。
ただ、狂犬病にかかったセントバーナードが、ガアア!!と襲ってくるだけの物語ではなく、整備工場のおっさんの奥さんと子供がどうなったかとか、何で狂犬病にかかったのかとか、あとですね、犬の視点で綴られる場面も盛り込まれていて、「あの犬は恐ろしい怪物」で終わってしまわないのです。「・・・何か、可哀想・・」って思わせる部分もきちんと描かれてます。
映像化もされています。古いですが。タイトルは「クジョー」となってますが、なかなか面白い作品でした。あのくらい映像化できるなら満足です。ちょっと、原作とラストが違うのですが、映像化されたほうのラストのほうが好きです。原作は少し報われない部分が強すぎるので。やはり、途中で痛い目にあったのなら、せめて最後くらいは救いが欲しいかなと思うので。
狂犬病って怖いんだ、と、この作品で知りました。
2009年04月24日
オッドトーマスの霊感
「オッドトーマスの霊感」 ディーン・クーンツ作品
これ、最初にアマゾンから「こんな商品も出てますよ」というお知らせに載ってるのを見たときは何かの冗談かと思ったタイトルだったのですが・・邦訳する時にもう少し何とかならないものかと思うタイトルが多いのでほんと、いい方法はないものですかね。
主人公はオッド・トーマス。何事にも控えめで、普通の生活を望む奥ゆかしい青年です。冒頭から、近所の顔見知りの少女とのごく日常的な触れ合い(挨拶とか)を描いてるなあと思ったら・・・彼は霊感青年でした。まあ、タイトルからして何らかのシックスセンスをもってるものだとは思ってたんですけど、「え、いきなりその女の子が幽霊ですか」って思わせる書き方はさすがです。と、いうのも、今回の作品は一人称で語られてて、オッドの主観でずっと語られてくので判別つきにくい部分があるんです。
近年のクーンツ作品はどうしてもサスペンス色が変に強すぎて、読みにくかった(正直)のです。今回のも最初はすっごく、オッドの一人称がくどくどと続くので読みにくいなあと感じました。でも、少女の幽霊との話からは、どんどん面白くなっていきますよ。
ところで、クーンツファンで有名と言えば作家の瀬名秀明氏。クーンツ作品のコレクターでもありますが、瀬名氏がこの作品かなり気に入ってるようで大絶賛しておりました。確かに、オッドのシリーズは次々読みたくなるし、出てくる登場人物で、オッドの力になる(・・・支えか)人達のなんと暖かいこと。
続編の翻訳、出版が楽しみな作品です。
2009年04月09日
臨場
横山秀夫 作品
臨場とは・・・警察組織での専門用語(隠語?)で、「事件現場に臨み、初動捜査にあたること」です。
この作品の主人公は、捜査一課調査官・倉石(くらいし)。
写真で見える帯のキャッチコピーを見てもわかる通り「異名は 終身検死官 」事件現場で死者の無言の叫びを聞き取る男です。と、言っても霊感があって恨みつらみを聞き取ってしまうというオカルティックな話ではなくて、経験からもとづいて、じっくり観察した現場や遺体の状況から、何があったかを的確に読み取るのです。
一旦は自殺として判断された件も「殺人」として立件したり、事件性ありという事件も「事故死」「自殺」と断定したり。
横山氏の警察小説の中でも一番好きな男が、この倉石だったりします。病的で、オヤジで、女好きなんですが、いい!!(笑
収録作品は「赤い名刺」「眼前の密室」「鉢植えの女」「餞」「声」「真夜中の調書」「黒星」「十七年蝉」の8編。
「餞」(はなむけ)が、他の7編よりもしっとりしていて一番静かな割に、心を抉ってくるような感覚を覚えた作品です。他ももちろん良いんですよ、「十七年蝉」もおすすめなのです。あ~、倉石、好きだーーーーーー!!!
2009年04月09日
陰の季節
横山秀夫 作品
警察小説を書かせたら天下一品(だと、思う)横山氏の短編集です。この人の作品って、警察小説の中でも第一線に立ってる人を主人公に据えるのではなくて、ちょっと奥に入って裏方をしてる人を取り上げてるのですが、そういうところも海外小説ばかり読んでて「○○捜査官」だの「○○保安官」だのという花形を主人公にしてきた私にはとっても新鮮。
人事担当の二渡(ふたわたり)を主人公に据えて展開するこちらの短編は、第5回 松本清張賞受賞作を含む、「D県警シリーズ」の第一弾。
収録作品は「陰の季節」「地の声」「黒い線」「鞄」の4編。
ちなみに、「横山秀夫って誰だっけ?」という方、最近ではこの方の作品で映画化されたのが「クライマーズ ハイ」です。それより少し前ならば「半落ち」かな。著者の写真を見た事もありますが、そう、すこ~し生え際が後退した感のある写真・・いいの、それでも、こんだけ作品が面白ければ。
2009年04月09日
デモンシード 完全版
ディーンクーンツ 作品
こちらは、創元SF文庫から完全版として全面改稿されて出版されたもの。内容的には初版と同じように、スーザンに惚れてしまった人工知能プロテウスの監禁物語(・・こう書くと何か嫌だな・・)なのですが・・
旧版が1973年の作品で、こちらは1997年に改稿・出版され、旧版の時代設定が1995~1996年くらいだったらしいので細かい部分も時代に合わせて改稿されているそうです。あと、旧版でも一人称のスタイルで書かれていた文体が、新版でも更に・・うまく言えないのですが・・強いて言うならば「ずっと一人称」という感覚で、あれ?と一瞬思ってしまうそうなのですが、何を隠そう私がこの作品を入手したのは新版が先だったので、そのあたりは違和感なくすらりと読む事ができました。
ふと、確認のために新版の表紙を見たのですが、よく見たら・・・女性の裸じゃないですか。まったくもう。プロテウスめ。
2009年04月08日
悪魔の種子 デモンシード
ディーン・クーンツ 作品
若い、一人暮らしの美人女性・スーザン に惚れ込んでしまった人工知能機械回路プロテウス。スーザンを独り占めするために彼女を自宅に閉じ込めてしまう話。
・・・なつき的に要約したら、こういうあらすじですが(笑)作品的にはかなり前に書かれたもので、こちらは初版。したがって、スーザンが一人で住んでる屋敷も、他の家事掃除オールマイティーにしてくれちゃう未来的なハイテク機器も斬新なようでどことなく古くさい設定の香りが漂ってまいります。
あと、人工知能のプロテウスがスーザンにぞっこん惚れ込んで、しまいには「自分との子供を作っちゃえ」という考えを起こすあたりが「もっと自分をみつめ直せよ・・・」と忠告してしまいたくなります。
機械って怖い。思いこみって怖い。その上、なんやらかんやらで、ほんとに身ごもってしまうのも怖い。
この初版を入手するまでは、かなり苦労した覚えがあります。クーンツ作品が好きで、この本の事を知った時にはすでに絶版状態で、あちこち探すけどダメ。古本屋巡りをするもダメ。しまいには知人に頼んで大阪の図書館で借りだしてもらい、全ページコピーしたり。
その後、友人の住む地域にある古本屋さんで見つけてくれた友人が、そっと買って送ってくれた時には感涙にむせびました。