2009年04月24日

クージョ



 


 「クージョ」  スティーヴン・キング作品



 自家用車が故障したために、子供と一緒に整備工場へと向かった母親。しかし、そこには狂犬病にかかったセントバーナードが待ちかまえていた・・・。


 故障した車の中に炎天下の中閉じこめられた親子の物語ですが、故障してるからクーラーかかんない、動かない、携帯もない、近所に家がない、整備工場のおっさんは死んでる・・という、絶対絶命の状況で、炎天下、子供も脱水症状を起こして衰弱するわ、外からはセントバーナードが牙むいて狙ってくるわ・・とにかく、一冊丸々、これでもかーーーーーッ!!ってくらいに親子をいじめ抜く状況が怖いです。



 ただ、狂犬病にかかったセントバーナードが、ガアア!!と襲ってくるだけの物語ではなく、整備工場のおっさんの奥さんと子供がどうなったかとか、何で狂犬病にかかったのかとか、あとですね、犬の視点で綴られる場面も盛り込まれていて、「あの犬は恐ろしい怪物」で終わってしまわないのです。「・・・何か、可哀想・・」って思わせる部分もきちんと描かれてます。




 映像化もされています。古いですが。タイトルは「クジョー」となってますが、なかなか面白い作品でした。あのくらい映像化できるなら満足です。ちょっと、原作とラストが違うのですが、映像化されたほうのラストのほうが好きです。原作は少し報われない部分が強すぎるので。やはり、途中で痛い目にあったのなら、せめて最後くらいは救いが欲しいかなと思うので。


 狂犬病って怖いんだ、と、この作品で知りました。  


Posted by 魚月なつき at 07:57Comments(0)海外小説

2009年04月24日

オッドトーマスの霊感



 


 「オッドトーマスの霊感」  ディーン・クーンツ作品


 これ、最初にアマゾンから「こんな商品も出てますよ」というお知らせに載ってるのを見たときは何かの冗談かと思ったタイトルだったのですが・・邦訳する時にもう少し何とかならないものかと思うタイトルが多いのでほんと、いい方法はないものですかね。



 主人公はオッド・トーマス。何事にも控えめで、普通の生活を望む奥ゆかしい青年です。冒頭から、近所の顔見知りの少女とのごく日常的な触れ合い(挨拶とか)を描いてるなあと思ったら・・・彼は霊感青年でした。まあ、タイトルからして何らかのシックスセンスをもってるものだとは思ってたんですけど、「え、いきなりその女の子が幽霊ですか」って思わせる書き方はさすがです。と、いうのも、今回の作品は一人称で語られてて、オッドの主観でずっと語られてくので判別つきにくい部分があるんです。


 近年のクーンツ作品はどうしてもサスペンス色が変に強すぎて、読みにくかった(正直)のです。今回のも最初はすっごく、オッドの一人称がくどくどと続くので読みにくいなあと感じました。でも、少女の幽霊との話からは、どんどん面白くなっていきますよ。



 ところで、クーンツファンで有名と言えば作家の瀬名秀明氏。クーンツ作品のコレクターでもありますが、瀬名氏がこの作品かなり気に入ってるようで大絶賛しておりました。確かに、オッドのシリーズは次々読みたくなるし、出てくる登場人物で、オッドの力になる(・・・支えか)人達のなんと暖かいこと。



 続編の翻訳、出版が楽しみな作品です。  


Posted by 魚月なつき at 07:48Comments(0)海外小説

2009年04月09日

臨場



 


 横山秀夫 作品



 臨場とは・・・警察組織での専門用語(隠語?)で、「事件現場に臨み、初動捜査にあたること」です。
この作品の主人公は、捜査一課調査官・倉石(くらいし)。

 写真で見える帯のキャッチコピーを見てもわかる通り「異名は 終身検死官 」事件現場で死者の無言の叫びを聞き取る男です。と、言っても霊感があって恨みつらみを聞き取ってしまうというオカルティックな話ではなくて、経験からもとづいて、じっくり観察した現場や遺体の状況から、何があったかを的確に読み取るのです。

 一旦は自殺として判断された件も「殺人」として立件したり、事件性ありという事件も「事故死」「自殺」と断定したり。


 横山氏の警察小説の中でも一番好きな男が、この倉石だったりします。病的で、オヤジで、女好きなんですが、いい!!(笑





 収録作品は「赤い名刺」「眼前の密室」「鉢植えの女」「餞」「声」「真夜中の調書」「黒星」「十七年蝉」の8編。



 「餞」(はなむけ)が、他の7編よりもしっとりしていて一番静かな割に、心を抉ってくるような感覚を覚えた作品です。他ももちろん良いんですよ、「十七年蝉」もおすすめなのです。あ~、倉石、好きだーーーーーー!!!  


Posted by 魚月なつき at 07:56Comments(0)国内小説

2009年04月09日

陰の季節



 


 横山秀夫 作品



 警察小説を書かせたら天下一品(だと、思う)横山氏の短編集です。この人の作品って、警察小説の中でも第一線に立ってる人を主人公に据えるのではなくて、ちょっと奥に入って裏方をしてる人を取り上げてるのですが、そういうところも海外小説ばかり読んでて「○○捜査官」だの「○○保安官」だのという花形を主人公にしてきた私にはとっても新鮮。



 人事担当の二渡(ふたわたり)を主人公に据えて展開するこちらの短編は、第5回 松本清張賞受賞作を含む、「D県警シリーズ」の第一弾。


 収録作品は「陰の季節」「地の声」「黒い線」「鞄」の4編。



 ちなみに、「横山秀夫って誰だっけ?」という方、最近ではこの方の作品で映画化されたのが「クライマーズ ハイ」です。それより少し前ならば「半落ち」かな。著者の写真を見た事もありますが、そう、すこ~し生え際が後退した感のある写真・・いいの、それでも、こんだけ作品が面白ければ。  


Posted by 魚月なつき at 07:46Comments(0)国内小説

2009年04月09日

デモンシード 完全版

 


 ディーンクーンツ 作品



 こちらは、創元SF文庫から完全版として全面改稿されて出版されたもの。内容的には初版と同じように、スーザンに惚れてしまった人工知能プロテウスの監禁物語(・・こう書くと何か嫌だな・・)なのですが・・


 旧版が1973年の作品で、こちらは1997年に改稿・出版され、旧版の時代設定が1995~1996年くらいだったらしいので細かい部分も時代に合わせて改稿されているそうです。あと、旧版でも一人称のスタイルで書かれていた文体が、新版でも更に・・うまく言えないのですが・・強いて言うならば「ずっと一人称」という感覚で、あれ?と一瞬思ってしまうそうなのですが、何を隠そう私がこの作品を入手したのは新版が先だったので、そのあたりは違和感なくすらりと読む事ができました。




 ふと、確認のために新版の表紙を見たのですが、よく見たら・・・女性の裸じゃないですか。まったくもう。プロテウスめ。

   


Posted by 魚月なつき at 07:37Comments(0)海外小説

2009年04月08日

悪魔の種子 デモンシード


 


 ディーン・クーンツ 作品




 若い、一人暮らしの美人女性・スーザン に惚れ込んでしまった人工知能機械回路プロテウス。スーザンを独り占めするために彼女を自宅に閉じ込めてしまう話。




 ・・・なつき的に要約したら、こういうあらすじですが(笑)作品的にはかなり前に書かれたもので、こちらは初版。したがって、スーザンが一人で住んでる屋敷も、他の家事掃除オールマイティーにしてくれちゃう未来的なハイテク機器も斬新なようでどことなく古くさい設定の香りが漂ってまいります。



 あと、人工知能のプロテウスがスーザンにぞっこん惚れ込んで、しまいには「自分との子供を作っちゃえ」という考えを起こすあたりが「もっと自分をみつめ直せよ・・・」と忠告してしまいたくなります。


 機械って怖い。思いこみって怖い。その上、なんやらかんやらで、ほんとに身ごもってしまうのも怖い。




 この初版を入手するまでは、かなり苦労した覚えがあります。クーンツ作品が好きで、この本の事を知った時にはすでに絶版状態で、あちこち探すけどダメ。古本屋巡りをするもダメ。しまいには知人に頼んで大阪の図書館で借りだしてもらい、全ページコピーしたり。


 その後、友人の住む地域にある古本屋さんで見つけてくれた友人が、そっと買って送ってくれた時には感涙にむせびました。  


Posted by 魚月なつき at 10:10Comments(2)海外小説